寿退社でも失業保険(雇用保険)をもらう条件。いつからいくらもらえる?
女性が結婚を機に退職する場合は、失業保険は関係ないと思っているかもしれませんね。
でも一定の条件を満たせば、寿退社する女性でも失業保険を受給することができるのです。
寿退社しても失業保険を受給するために必要なことを紹介します。
結論!寿退社でも働く意志があれば失業保険はもらえる
女性の中には結婚を機に退職する方もいますね。
なかには働く意志があっても、結婚にともなう転居や、ライフスタイルの変化で退職せざるをえないというケースもあるでしょう。
「寿退社は自己都合退職だから失業保険はもらえない」と考える方もいるかもしれませんが、一定の条件をクリアし、積極的に働く意志があるなら、失業保険を受給可能です。
そもそも失業保険って何?
失業保険とは雇用保険の被保険者(保険料を払っている人)が失業をして、再就職先を探している間に支給される「雇用保険の基本手当(給付金)」のこと。
誰でも無条件にもらえるものではなく、一定の条件をクリアする必要があります。
ちなみに正職員として働いている公務員は、雇用保険に加入していないため、失業保険をもらうことはできませんが、退職手当を受け取ることができます。
失業保険をもらう条件
寿退社のような自己都合退職の場合、失業保険をもらうための条件は以下の3つ。
- 雇用保険に加入している
離職前の2年間に12ヶ月以上加入している必要がある。特定理由離職者※は離職前の1年間に6ヶ月以上加入が条件 - 失業している
- 再就職の意思があり、再就職活動をしている
※特定理由離職者については後述します。
パートやアルバイトでも失業保険をもらえる
雇用保険に加入するための条件は、原則として「1週間に20時間以上働き、更に31日以上働き続ける予定であること」。
この条件を満たせば、契約社員、パートやアルバイトでも雇用保険に加入可能できるので、失業保険ももらえます。
【パターン別】寿退社で失業保険をもらえる?もらえない?
失業保険の給付の大前提は、積極的に「働きたい」という意思があるということ。
次のパターンで、自分がもらえるかどうかをチェックして!
- 寿退社後すぐに転職
→失業保険はもらえない - 寿退社後すぐには再就職しないが、働く意思がある
→失業保険がもらえる - 寿退社後、専業主婦になりたい
→失業保険がもらえない - デキ婚で退職するので、すぐには働けないが就職の意志がある
→受給期間延長の申請をし、働ける状態になってから求職活動をすれば失業保険がもらえる(詳しくは後述します) - 寿退社後、学校に通いたい
→昼間学校に通うことは、「失業の状態」とはみなされないので、失業保険はもらえない
失業保険を受給する場合の、退職と入籍のタイミング別注意点
退職後、失業保険をもらうことを考えると、退職や入籍のタイミングは何を注意すればいいでしょうか?
退職後入籍し、失業保険の手続きをする
退職する時、失業保険の受給に必要な書類を会社から受け取ります。
ところがそれらに書かれている名前は、入籍前のもの。(旧姓)
入籍後、最初にハローワークに行って失業保険の手続きをする時に、併せて氏名・住所の変更をする必要があります。
戸籍謄本(もしくは、婚姻届受理証明書)、住民票などの新しい氏名・住所を証明するものを持参しましょう。
入籍後退職し、失業保険の手続きをする
退職する前に、勤務先で氏名・住所変更、給与振込先の名義変更の手続きが必要。
離職票には新姓が記載されるので、ハローワークでの氏名変更の必要はなし。
退職後失業保険の手続きをして、入籍する
失業保険の受給中にハローワークで氏名・住所変更手続きが必要。
なお在職期間が12ヶ月未満だと、失業手当は受け取ることができません。
退職日を決める時には、会社の在職期間にも注意をはらって。
変更時に必要なものは『【妊娠や扶養など】こんな時、失業保険はもらえる?』の項参照。
失業保険の必要書類。結婚退職時に勤務先でもらうもの
退職する際には、勤めていた職場で受け取っておくべき書類があります。
失業保険の手続きで必要なものもあるので、「もらい忘れた!」なんてことがないように。
- 雇用保険被保険者離職票1及び2(転職先が決まっている場合は不要)※通常、退職後10日以内に交付されます
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 年金手帳
国民年金・国民健康保険加入に必要なもの
退職して失業保険を受給するなら、基本的に夫の扶養には入れないので、国民年金や国民健康保険に加入する必要があります。
その手続きに必要な以下の書類ももらっておいて。
- 退職証明書(離職証明書)
- 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失証明書など
なお会社からハローワークに提出する退職証明書(離職証明書)については、離職前に本人が記名押印、または自筆による署名をすることになっています。
離職証明書に記名押印(署名)する時、離職理由などの記載内容についても確認を。
いつからいくらもらえる?失業保険の受給金額と支給期間
失業保険の受給金額や支給期間は、雇用保険の加入期間や退職する理由などによって変わってきます。
失業保険の支給金額
基本手当日額=(退職前6ヶ月間の給料÷180)×給付率(45~80%)
離職前6ヶ月間の給料(賞与除く)を、180日(30日✕6ヶ月)で割って、1日あたりの賃金日額を算出します。
この賃金日額に給付率をかけて算出されるのが、1日あたりの失業手当の額(基本手当日額)になります。
給付率は、賃金が高かった人は低く、賃金が低かった人は高く設定されています。
目安として、給与の50%~80%の額を受給できると言われています。
なお失業保険の基本手当は所得ではないので、所得税・住民税の対象にはなりません。
基本的な支給期間
結婚などが理由の、自己都合退職の場合、ハローワークでの失業手続き完了後、【7日間の待機期間】+【3ヶ月間の給付制限期間】を経て初めて、基本手当を受給できます。
基本手当をもらえる日数は、所定給付日数(支給期間)と呼ばれ、これは雇用保険に加入していた期間で決まります。
雇用保険の加入期間と所定給付日数(支給期間)は以下の通り(全年齢)。
- 1年未満→0日
- 1年以上10年未満→90日
- 10年以上20年未満→120日
引越しを伴う寿退社なら、「特定理由離職者」となり、すぐに受給可能
寿退社は一般的に自己都合退職となりますが、以下のように退職して引越しをせざるを得ないケースは別。
夫(妻)が転勤になったり、遠距離恋愛で結婚してどちらから引越しする必要がある場合など。
これらの場合は「特定理由離職者」に当てはまり、一般的な自己都合退職の場合より早く、基本手当の支給がはじまります。
具体的には、手続き完了後【7日間の待機期間】のあと、すぐに基本手当が受給できるようになります。
ただし、特定理由離職者の対象となるには、「退職から引越しまでの期間が約1ヶ月以内」が目安。
この期間が1ヶ月以上空いていると、結婚で引越しが必要になったから退職したのか、自己都合で退職後に引っ越したのか、判断がつきにくいからです。
先に入籍して退職し、数ヶ月間の別居婚から同居するといったパターンの場合、特定理由離職者とはみなされません。
結婚退職後、失業保険はいつまでに手続きするの?
基本手当をもらいたいなら、退職後速やかにハローワークに行くことを忘れないで。
というのは、所定給付日数(支給期間)には、有効期限があるからです。
所定給付日数(支給期間)の有効期限は受給期間といって、退職日の翌日から1年間と決まっています。
したがって退職から1年以内に、所定給付日数(支給期間)をすべて消化して、基本手当をもらい終えなければなりません。
もし所定給付日数(支給期間)を消化している途中で、1年がたってしまったら、すべての基本手当をもらうことができなくなってしまいます。
失業保険手続きが遅れた場合の例
例えば、勤続7年の人が12月末日に退職するとします。
この場合、翌年の12月末日までが受給期間(失業手当がもらえる有効期間)。
退職した翌年の8月に失業保険の手続きを始めた場合、【7日間の待機期間】+【3ヶ月間の給付制限期間】をへて、基本手当を実際にもらえるのは、11月に入ってから。
勤続7年の場合、本来の所定給付日数(支給期間)は90日ですが、失業保険の受給期間が12月末で終了なので、実際には50日間くらいしか消化することができません。
失業保険の手続き方法
失業保険の手続き方法を説明します。
1. 必要書類を準備する
- 雇用保険被保険者離職票1及び2
- 個人番号確認書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)のうち1つ - 身元確認書類(コピー不可)
運転免許証、マイナンバーカード、官公署発行の身分証明書・写真付きの資格証明書などのうち、いずれか1種類(新姓)。
この書類が揃わない場合は、公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など、種類が異なるものを2種類(新姓)。 - 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
- 本人の印鑑(新姓/認印で可。シャチハタ不可)
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(新姓)
- 婚姻届受理証明書(※)
- 世帯全員分の住民票(※)
(※)退職→入籍後に手続きをする場合と特定理由離職者は7、8が必要。
2. 最寄りのハローワークで失業保険の手続きをする
離職票が届いたら、速やかに現住所を管轄するハローワークに行って、求職の申し込みと失業給付受給のための手続きを行います。
ハローワークで、失業給付の条件を満たしていることを確認されると、受給資格が決定します。
3. 雇用保険説明会に参加する
指定された日時に、雇用保険説明会(雇用保険受給者初回説明会)に参加します。
これを経ると、雇用保険受給資格者証がもらえます。
雇用保険受給資格者証はハローワークに行くときに必要なので、大切に保管して。
4. 失業認定日にハローワークへ行く
失業認定日にハローワークへ行って、失業認定申告書を提出し、失業の認定を受けます。
失業の認定を受けるためには、月2回以上の求職活動が必要です。
5. 受給
失業認定日から通常5営業日後に、指定の口座に失業手当が振り込まれます。
原則として4週間に1度、ハローワークに行って失業の認定を受けることで、失業手当が受給されます。
再就職する気がないのに、見かけだけの求職活動をして失業保険をもらうことは「不正受給」にあたります。
【妊娠や扶養など】こんな時失業保険はもらえる?
初めて受給する失業保険、しかも結婚がからむとわかりにくいこともたくさん。
失業保険受給中の疑問にお答えします。
- デキちゃった婚で退職する場合
- 失業保険を受給中に妊娠した場合
- 失業保険を受給中に結婚した場合
デキちゃった婚の場合、失業保険はもらえる?
デキ婚(授かり婚)であっても、出産後に働く意志があれば失業保険を得ることができます。
でも退職後すぐには求職活動ができないので、ハローワークで受給期間を延長しておく必要があります。
受給期間の延長をすると、基本手当は一時的にもらえなくなります。
出産後働けるようになって求職活動を始めれば、支給が始まる仕組みになっています。
延長申請すると、働けなくなった日数分だけ、受給期間を伸ばすことができます。
なので、退職後1年を過ぎていたとしても基本手当を受け取ることができるのです。
延長できるのは原則最大3年間までなので、本来の受給期間を含めると最大4年後まで延長が可能。
デキ婚で失業手当の延長申請をする例
例えばデキ婚で12月末日に退職した場合、失業保険を受給できるのは本来なら、翌年の12月末まで。
働く意思はあっても妊娠中のため、退職後すぐには働けません。
受給期間を延長し、翌年の11月1日から求職活動を始めるとします。
妊娠出産のために求職活動できなかった10ヶ月分の延長が可能です。
退職した翌年の、さらに次の年の10月末までが、実質的な受給期間となります。
受給期間延長はいつまでに?
受給期間延長の申請期間は原則として、退職した翌日から30日目を経過した後の、さらに翌日以降すみやかに。
◆例:5月20日に退職する場合
退職した翌日…5月21日
30日を経過した後…6月19日
その翌日…6月20日
つまり、6月20日以降、延長の手続きを申請することができます。
雇用保険被保険者離職票や、母子手帳(延長理由の事実を確認できるもの)などが必要です。
必要書類は、郵送または代理人による提出も可能ですが、代理人の場合は委任状が必要。
失業保険を受給中に妊娠した!給付金はもらえる?
失業手当を受給中に妊娠しても出産後に働く意志があるなら、いったん給付金の受給をやめ、出産後求職活動を始めた時に再開することができます。
ただしデキちゃった婚の場合と同様に、受給期間を延長する必要があります。
申請すれば、妊娠・出産が原因で求職活動ができなかった分だけ、受給期間を延長することができます。
ハローワークには、妊娠が理由で30日以上職業に就くことができなくなった日の、翌日以降できるだけ早く申請します。
新姓には、雇用保険受給資格者証や、母子手帳(延長理由の事実を確認できるもの)などが必要です。
書類提出はデキ婚と同様、郵送または代理人による提出も可能ですが、代理人の場合は委任状が必要です。
失業保険を受給中に結婚した場合、給付金はもらえる?
失業保険支給中に入籍しても、受給は継続できます。
この場合ハローワークで、氏名や住所の変更手続きが必要です。
氏名・住所変更に必要な書類
- 雇用保険受給資格者証
- 受給資格者氏名・住所変更届
- 払渡希望金融機関変更届(氏名変更時に必要)
- 新しい住民票などの証明書類
2と3はハローワークの窓口でもらえます。
引っ越しにより管轄するハローワークが変わる場合は、引っ越し先で手続きします。
失業保険を受給中に結婚したら、夫の扶養に入れる?
失業保険を受給している間は、結婚しても原則、夫の健康保険の扶養には入れません。
というのは、夫の健康保険の扶養に入るための条件は、妻の年間収入が130万円未満となっているから。
失業手当を日額3,612円(130万円÷360日に相当する額)以上もらっている場合、1年間に換算すると130万円 を超えてしまうので、夫の健康保険の扶養には入れません。
もし日額3,612円未満なら、もらえることもあります。
7日間の待機期間中など、失業手当を実際に受け取っていない期間中なら、扶養に入ることが可能な場合も。
ただし健康保険組合によって規定に違いがあるので、実際に扶養に入れるかどうかは夫の組合に確認を。
退職後なかなか再就職できず、1年間の給与が103万以下になる場合は、配偶者控除も適用されます(夫の合計所得金額が1,000万円を超えない場合)。
失業保険を受給中にアルバイト・パートをしてもいい?
失業中の生活を支えてくれる、雇用保険(失業保険)。
でも寿退社のような自己都合退職の場合、支給まで3ヶ月は待たなくてはならず、その間収入がないのは不安ですよね。
一定のルールを守れば、アルバイトしながら求職活動をするのは可能です。
7日間の待機期間中はアルバイトNG
失業保険の手続きをしてから7日間の待機期間中は、アルバイトができません。
この期間は、失業状態でなければならないからです。
ほんのわずかな収入でも得た場合は、待機期間が延長になるので要注意。
給付制限期間中は週20日未満でアルバイト可能
週20時間を超えない範囲ならアルバイトはOK。
理由は「1週間の所定労働時間が20時間以上の場合」および「31日以上の雇用が見込まれる場合」になると雇用保険加入条件を満たし、「就職した」とみなされてしまうから。
失業保険受給期間中、アルバイトするなら申告を
失業保険を受給中にアルバイトは可能です。
ただし、失業認定日にハローワークに提出する「失業認定申告書」で、アルバイトの内容が以下のどちらにあてはまるかを申告する必要があります。
- 1日4時間以上の労働をした「就職または就労」
- 1日4時間未満の労働である「内職または手伝い」(報酬の発生しないボランティア活動なども申告)
1日4時間以上の労働をすると、「就職した」とみなされ、その日の分の給付金は本来の支給期間終了後に、そのまま繰越されます。
1日4時間未満なら、その日の分の失業手当は支給されますが、減額される可能性も。
求職活動中に失業手当もしっかり受給しながらアルバイトもしたいなら、1日4時間以上で、かつ1ヶ月以内の短期アルバイトが適しています。
ただし失業保険を受給できる期間は、退職日から1年であることを忘れずに。
アルバイトをしたために給付金の支給を繰越した結果、退職後から1年が過ぎてしまったら、もらえなくなる給付金が出てきてしまいます。
まとめ
- 一定期間雇用保険に加入し、働く意志があれば、失業保険は受給できる
- 失業手当はそれまでもらっていた給与の50%~80%が目安
- 失業保険受給中は、基本的に夫の健康保険の扶養には入れない
- 失業保険の受給中に妊娠したら受給期間延長手続きが必要
- 条件付きで失業保険受給中にアルバイトできる
失業保険を受給するための大前提は働く意志があること。
もし働く意志があるなら、失業保険を受給しながら、結婚後のライフスタイルにあった再就職先をじっくり探してみてはいかがでしょうか。