婚姻届を出した後もしばらく別居する「別居婚」の手続き
結婚したら、ひとつ屋根の下に暮らすのが当たり前と考えられていたのは一昔前のこと。
最近では、入籍後もさまざまな理由ですぐには同居せず、別居のまま結婚生活をスタートさせる「別居婚」を選ぶカップルが増えてきています。
別居婚をする時に必要な手続きを紹介します。
別居婚とは、入籍後も同居しない結婚スタイル
別居婚とは住所が別々のまま入籍し、その後もすぐには同居しない結婚スタイルのこと。
具体的には、こういったパターンが多くなります。
- 仕事や新居の都合でしばらく別居する
- 結婚式が終わるまでは別居する
法律上、夫婦は同居してお互い協力し合って助け合わなければならないことが規定されていますが(民法第752条)、夫婦の同意のもとに別居しているのであれば、法律違反にはなりません。
ちなみに結婚当初は同居していたものの、不仲などが原因で別居状態になることは別居婚とは言いません。
Check!
- 籍だけ入れて、別々に暮らすことを「別居婚」という
- 夫婦で住所が違っても問題ない
- 仕事の都合や出産など、一時的な別居婚もあれば、自由な婚姻関係としてあえて別居婚を選ぶカップルもいる
入籍後もしばらく別居する場合の法的手続き
婚姻届をだすけど、別居状態を続ける場合、婚姻届や住民票をどうするかが気になりますね。
婚姻届
結婚後も別居するからと言って、とくに必要な手続きはありません。
現在の住所で別居婚をスタートするなら、婚姻届を提出すれば法的な手続きは完了です。
婚姻届を提出後も別居する場合の書き方は、この下の段落で詳しく解説します。
住民票
婚姻届を出すと戸籍が変わるので、住民票も何か手続きが必要なのでは?と思いますが、その必要はありません。
住民票は現住所がどこにあるかを証明する書類。婚姻届の提出前後で住む家が変わらないなら、住民票の手続きは必要ありません。
夫婦別々に住民登録をすることができますし、結婚(入籍)したからといって住民票の住所が夫や妻のどちらかに勝手にまとめられることはありません。
ただし入籍後に引越しをして住所が変わる場合は、それぞれが転出届や転入届を出す必要があります。
なお婚姻届を提出した後は、下記の項目が、住民票に自動的に反映されます。
- 婚姻後の夫婦の氏(苗字)
- 夫婦の新しい本籍
- 筆頭者の氏名
- 世帯主との続柄
Check!
- 別居婚だからといって、特別な手続きは必要ない
- 夫婦別々の住所を記入して、婚姻届を出すだけ
- 入籍前後で住所が変わらないなら、住民票の変更手続きも必要ない
別居婚をする時の、婚姻届の書き方
別居婚になることがわかっている場合でも、婚姻届を出さなければなりません。
婚姻届は別居婚だからといっても違う用紙に書くわけではなく、入籍後すぐに同居する場合と書き方に大きな差はありません。
婚姻届に記入するのはこれらの項目。
- 氏名、住所
- 世帯主の氏名
- 本籍
- 父母の氏名
- 父母との続き柄
- 婚姻後の夫婦の氏
- 新しい本籍
- 同居を始めたとき
- 世帯のおもな仕事
- 夫婦の職業
- 届出人署名押印
- 連絡先 など
別居の場合の婚姻届の書き方で、ちょっと気をつけてほしいポイントをまとめました。
住所
婚姻届を出す時点の住所(現住所)を書きます。
「夫」と「妻」で別の住所で、問題ありません。
実家に住んでいるなら、現住所を実家のまま入籍が可能です。
世帯主の氏名
「住所」欄に書いた世帯の代表者の名前を書きます。
つまり、自分がいま住んでいる家の世帯主の名前です。
世帯主は住民票に記載されているものを記入しますが、夫と妻の欄で世帯主が違っても問題ありません。
- お互い一人暮らしで、現住所の世帯主が自分:それぞれ自分の名前
- 実家暮らし:父親母親など、世帯主の名前
新しい本籍
本籍地は、住民票に登録されている住所とは、まったく全く別ものです。
入籍後もしばらく別居する場合でも、どこか1か所の本籍地を指定しなくてはいけません。
一般的には、どちらかの実家やこれから住む場所を新しい本籍に選ぶことが多いです。
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ちなみに、本籍地はどこでもOKなので、「東京タワー」「皇居」「明治神宮」などもアリ。
ただし「戸籍謄本」が必要になった時(パスポートの取得や子どもの入学・進学など)は、本籍地の役所まで取りに行かなくてはいけません。
現実的に考えて、住んでいる場所から行きやすいところに本籍を置くのがオススメです。
なお本籍地は変更(移動)が可能です。婚姻届の提出時は、彼のマンションなど仮の住所にしておいて、同居を始めたら本籍地を新居に移すこともできますよ。
同居を始めたとき
通常は「二人が結婚式を挙げたとき」、または「同居を始めたとき」のうち、どちらか早い方を記入することになっています。
ただし別居婚の場合、「同居を始めた時」は空欄になります。
別居婚だからといって婚姻届の書き方が大きく変わるわけではありませんが、心配な場合は、提出前に役所に出向いて事前審査を受けることをオススメします。
別居婚の場合、婚姻届提出後の手続き(免許証など)
婚姻届を提出した後、新しい戸籍謄本や住民票ができるまでの流れは次の通り。
- 婚姻届を提出→受理される
- 婚姻届の内容を反映した、夫婦の新しい戸籍が作られる
- 新しい戸籍が記載された戸籍謄本(戸籍抄本)や住民票を取得できるようになる
入籍後すぐに一緒に暮らす場合も、しばらく別居する場合も、手続きに変わりはありません。
運転免許証など名義変更は必要
別居婚で住所が変わらなくても苗字が変わります。
そのため、運転免許証などの身分証明書や、銀行口座などの名義変更を行わなければなりません。
新しい戸籍の内容が反映された戸籍謄本や住民票を取得したら、各種名義変更の手続きを早めに済ませましょう。
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引越しして、同居を始めた場合
もし別居婚をやめて2人で同居を始める場合には、通常の引越しと同様、新しい住所に転居してから14日以内に住民票の異動手続きを取ります。
別居婚で気になる、社会保険や扶養のこと
結婚していると、場合によっては妻が夫の扶養に入れたり、勤務先から補助を受けられるなどのメリットがあります。
別居婚の場合は、このようなメリットを受けることができるのでしょうか?
別居婚でも、夫の扶養(社会保険)に入れる
別居婚であっても次の条件のいずれかを満たしていれば、一般的には妻が夫の社会保険の扶養に入ることができます。
- 妻が無職の場合
- 妻の年間収入が130万円未満でかつ被保険者(夫)からの仕送り額より少ない場合
ただし失業給付をもらっていると「働く意思があって生活の面倒を見てもらうつもりがない」とみなされ、給付金額によっては扶養には入れなくなるので注意が必要です。
さらに会社員の場合は、住民票を夫婦で別にすると、家賃補助が受けられないといった福利厚生面でのデメリットが発生します。
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別居婚で夫婦の住民票が別の場合、「国民健康保険」は別々
国民健康保険に加入している場合、夫婦の住民票を別々にすると、保険料が別々に発生することになります。
国民健康保険は通常、住民票に記載された「世帯主」がまとめて払うことになっているからです。
もし最初は同居していたのに、引っ越して住民票を別々にするとしたら、それぞれの世帯主が保険料を納めることになります。
別居婚で子供が生まれた時の手続きは?
別居婚の夫婦に子ができた場合はどうしたらいいのでしょうか?
子どもができた場合、出生届の提出や子どもを対象とした自治体のサービスも考慮しなくてはなりませんね。
別居婚の場合、夫婦で住民票が別になりますが、赤ちゃんの出生届は妻の住所で出したほうがいいでしょう。
- 母子手帳の交付
- 赤ちゃんの健康診断
- 予防接種
これらは住民票がある自治体で受けることになっているので、母親の住所の方がなにかと都合がいいからです。
これ以外にも、子供が生まれると自治体からさまざまなサービスや助成金が受けることができます。
ルールは自治体によって異なるので、妊娠がわかった時点で、役所で確認することをオススメします。
まとめ
- 別居婚の場合も婚姻届は提出する
- 引っ越しを伴わない別居婚なら住民票を動かす必要はない
- 婚姻届の「同居を始めるとき」は空欄でOK
- 別居婚する場合は、社会保険や勤務先の福利厚生の扱いを要チェック
- 別居婚中に子供が生まれたら出生届けは母親の住所にしたほうがいい
婚姻届を出してもしばらく別居を続ける新しい結婚スタイルについて紹介しました。
特別な手続きは必要ありませんが、戸惑った時はその都度役所や勤務先に確認して、1つひとつクリアしていきましょう。
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