苗字だけの婿と婿養子は違う!妻の姓を名乗るカップルの割合
婚姻届を提出する際は、夫婦の氏を選択します。結婚後、妻の姓を選んだ場合、それは「婿養子」になるのでしょうか?
答えは、NOです。
単純に女性側の苗字を選んだだけなので、婿養子とは言いません。いわば苗字だけのお婿さん、という形になります。
では一体、どんな人を婿・婿養子と呼ぶのでしょうか?ここでは、婿と婿養子の違いや、妻の姓を名乗ることのメリットなどについて説明します。
婿と婿養子、それぞれの意味や違いは?
そもそも婿とは、戦前の日本にあった制度です。お嫁さんのお家に入ることを「婿入り」と呼んでいました。
しかし、今の法律に婿という制度はなく、言葉だけが残っている状態です。
妻の姓を名乗る「婿」と、「婿養子」の違い
一般的に婿と呼ばれる人には、2つのタイプがあります。
ひとつは婿(苗字だけ変える)、もうひとつは婿養子(養子縁組をする)です。婿と婿養子は混同しがちですが、実は全く違うものなんです!
妻の苗字を名乗る点は同じですが、妻一家との戸籍関係や相続権の扱いが全然違うんですよ。
大きな違いは「必要な手続き」「妻一家との戸籍関係(相続権の有無)」の2つ。それぞれ詳しく解説していきます。
手続き | 妻親の相続権 | |
---|---|---|
婿(苗字だけ) | 無し | 無し |
婿養子 | 養子縁組 | 有り |
婿入りとは「妻の苗字を名乗る」だけ
婿入りとは、男性が女性の苗字を名乗ることです。相続権や名義変更手続きなどは、女性が夫の姓を名乗るときと同じです。
特別な手続きは必要なし!婚姻届で「妻の姓」を選択するだけ
入籍後、夫が妻の苗字を名乗るだけなら、特別な手続きはありません。
婚姻届にある「婚姻後の夫婦の氏」の欄で「妻の姓」を選択すれば、手続きは完了します。
戸籍の筆頭者は妻。世帯主は収入の多い方が担う
入籍後は、それぞれ親の戸籍から抜けて、二人の新しい戸籍を持ちます。
戸籍の筆頭者は「婚姻届を出したとき、夫婦どちらの氏を選んだか」で決まるので、婿入りしたカップルの戸籍筆頭者は妻になります。
また、戸籍の筆頭者に似たものとして「世帯主」があります。世帯主は、住民票に記載されている、世帯の代表者のことです。
世帯主は戸籍と関係なく、基本的には夫婦二人のうち、収入の多い方が世帯主になります。
妻の苗字を名乗るだけなら、夫に相続権はない
婿入りと婿養子の一番の違いは、妻の両親の財産を相続できるかどうかです。
妻の姓を名乗るだけの人は、妻の両親の相続権を得られません。
婿養子とは「妻の親と養子縁組をする」
婿養子とは、妻の親と養子縁組をしたうえで、妻の苗字を名乗る人を指します。
養子縁組という特別な手続きをするので、妻一家との戸籍関係や相続に関して、苗字だけの婿と違う点がたくさんあるんですよ。
妻の両親と養子縁組をしてから、婚姻届を提出する
結婚して婿養子になるなら、手続きの順番に注意しましょう!
まずは妻の両親と養子縁組手続きを行います。婚姻届は養子縁組をした後、もしくは養子縁組の書類と同時に提出します。
ちなみに、入籍後も妻の両親と養子縁組手続きをすることは可能ですが、婚姻届提出前に行うよりも書類作業が増えるので注意しましょう。
婿養子は、妻の両親から財産を相続する権利がある
婿養子になると戸籍上、男性は妻の両親の子どもになるので、相続権を得ます。
なお婿養子になっても、実親との親子関係がなくなるわけではありません。つまり婿養子になった男性は、実の両親と妻の両親、双方の相続権を得ることになります。
また子どもは、親に対して扶養義務があります。養子縁組すると実の両親に加えて、妻の両親の扶養義務が生まれる点も、忘れず押さえておきましょう。
苗字だけの婿入り・婿養子のメリット・デメリット
なかなかイメージの湧きにくい婿入り・婿養子。一体どのようなメリット・デメリットがあるのか、それぞれまとめました。
婿入り(苗字だけ)するメリット・デメリット
【メリット】
嫁姑問題がない
妻の家族から大切にされる
【デメリット】
(男性側が)名義変更手続きの手間がかかる
周囲の人から好奇の視線を向けられるかも
婿養子になるメリット・デメリット
【メリット】
妻の両親の相続権を得られる
【デメリット】
実の両親だけでなく、妻の両親の扶養義務も発生する
離婚手続きが面倒
やっぱり少ない?結婚後に「妻の苗字を名乗る」カップルの割合
日本では、結婚したあと男性の姓を名乗るの人が多いです。では一体、婿入りを選ぶカップルはどれくらいいるんでしょうか?
厚生労働省による人口動態統計調査(平成28年度)では、女性の苗字を名乗るカップルの割合は4%でした。
過去のデータと比べると、妻の苗字を選択するカップルは増えていますが、まだまだ少数派のようです。
参考:厚生労働省:平成28年度 人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況
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先輩カップルが婿入り・婿養子を選んだ理由
先輩カップルが婿入り・婿養子を選んだ理由は色々あります。多かったのはこんな理由でした。
- 希少苗字を絶えさせないため
- 妻の実家が資産家なので
- お墓を守るため
- 妻が一人っ子・姉妹しかいないから
- 夫の実家の都合
- 配偶者が外国人だから
- 女性が姓を変えるという女性差別的な考えが嫌だから
多かったのは、妻の実家に跡取りが必要だから、という理由。資産や墓をはじめ、さまざまな理由で妻の実家を存続させる必要があると、婿入り・婿養子が選ばれやすいようです。
「結婚するとき、絶対に女性が苗字を変えないといけない」なんて決まりはありません。慣習にとらわれず、お互い納得のいく選択をしましょう。
入籍後も姓を変えたくない!夫婦別姓にできるの?
- アイデンティティがなくなるように感じるから
- 花嫁さんも花婿さんも希少苗字だから
- 仕事上の不都合があるから
このような理由で、入籍後も姓を変えず、夫婦別姓にしたいなと考えているカップルもいます。
しかし結論から言うと、現在の日本の法律で夫婦別姓にはできません。
民法で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と決まっているので、夫婦で一つの姓を名乗る必要があります。(ただし国際結婚を除く)
旧姓併記、通称使用は可能
マイナンバーカードや免許証、住民票は旧姓併記ができます。
パスポートは条件付きで旧姓併記が可能です。しかし旧姓併記が原因で、入国手続きのとき揉めごとになるなど、トラブルが発生するケースもあるので注意しましょう。
会社によっては、通称として旧姓を名乗り続けることもできます。まずは総務部などに確認してみましょう。
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入籍後の新しい住民票の発行・旧姓併記についてはこちら>>
結婚後の免許証の名義変更手続き・旧姓併記についてはこちら>>
パスポートを旧姓のまま使用するときの注意点はこちら>>
結婚後、妻の苗字を名乗るなら。男性に必要な名義変更手続き一覧
婿入り・婿養子になって苗字が変わると、男性側が多くの名義変更手続きをしなくてはいけません。
あらかじめ、名義変更するものや必要書類を確認して、スムーズに行いましょう。
男性に必要な名義変更も、女性に必要な名義変更も、内容は同じです。面倒ですが、頑張ってひとつずつ終わらせましょう!
- 住民票
- 国民年金・国民健康保険
- 健康保険証
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- 車検証
- パスポート
- 銀行口座
- クレジットカード
- 生命保険・損害保険
- 携帯電話
- インターネット・ケーブルテレビ
- ガス・水道
- ネット通販・webサイトの登録情報
- 奨学金の登録情報
- 不動産
- 国家資格など
- 会社の手続き
効率よく名義変更する方法は、こちらの記事にまとめてあります。参考にしてくださいね。
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婿入り・婿養子にまつわる、よくある悩み
結婚して婿・婿養子になる人は少数派。結婚に際して、予想しなかったトラブルが起きがちです。
Q1.妻の姓を名乗ることを、親に反対されたら?
結婚後に妻の苗字を名乗ることを両親に反対されても、感情的にならず、お互い納得できるまで話し合いしましょう。
- 自分達が妻の苗字を名乗りたい、具体的な理由
- 両親が、妻の苗字を名乗ることに反対する具体的な理由
話し合いではこの2点を明確にするのが重要。両親の反対する理由が分かったら、妥協点も探しましょう。
例えば「苗字が変わると寂しいから」反対されてるなら、正月やお盆には帰省したり定期的に連絡を取り合ったり、両親を寂しくさせない提案をするなど、お互いが歩み寄れる部分を見つけていきましょう。
Q2.結婚後は妻の姓にしたい・してほしい。いつ切り出せばいいの?
結婚を考えだしたら、なるべく早く話をしましょう。
残念ながら現在、結婚後に妻の姓を名乗るカップルは少数派です。婿入り・婿養子を選ぶなら、本人同士が納得していることはもちろん、両家の親から理解を得る必要があります。
親に反対されて、話し合いが上手くいかないケースも。じっくり話し合う時間をとるためにも、相手にはなるべく早く事情を話しましょう。
Q3.婿入り・婿養子の結納はどうやればいいの?
婿入り・婿養子の結納は、一般的な結納の、男女の立場が逆転した形式で行われるケースが多いです。
「女性側主導で行う」「結納金が通常の倍」「結納品の表書きが変わる」という3点を押さえておきましょう。
Q4.婿養子になったあと離婚したら、苗字や戸籍はどうなるの?
婿養子が離婚すると、苗字や戸籍は入籍前と同じ状態になります。
実の両親が死亡していて、戻る戸籍がなくなっているなら、新しく戸籍を作ります。
もしも旧姓に戻したくない場合は、7年以上養子縁組をしていた場合に限り、妻の苗字を選べますよ。
なお婿養子が離婚する際は、手続きの順番に気をつけましょう。まずは養子縁組を解消する「離縁届」、その次に「離婚届」という順番で書類提出します。
まとめ
- 婿入りとは、妻の苗字を名乗るだけ。妻の両親の相続権はなし
- 婿養子とは、妻の両親と養子縁組すること。妻の両親の相続権、扶養義務がある
- 妻の苗字を選ぶカップルの割合はわずか4%
婿入り・婿養子についてまとめました。
婿と婿養子は似ている部分も多く、混同しがちです。婿入り・婿養子を考えているカップルは、結婚前にそれぞれの違いをしっかり確認しておきましょう!
苗字についての考えは人それぞれ。二人でしっかり話し合って結論を出したいですね。