結婚して退職したら扶養に入るべき?条件・入れない場合など
「結婚を機に仕事を辞める」もしくは「しばらくはゆっくりしたい」なら、退職後は「夫の扶養に入る」ことを検討している花嫁さんもいるでしょう。
でも、「扶養に入る」「扶養から外れる」という言葉、日常的によく使うわりには、きちんと理解している方が少ないかもしれません。
扶養に入る・入らないで世帯収入やライフスタイルが変わってくるので、退職前に把握しておくことが必要です。
ここでは、「結婚退職後の扶養」についてじっくり説明します。
※本記事の情報は、2019年3月時点のものです。
そもそも扶養に入るってどういうこと?
夫がサラリーマンや公務員の場合、妻は夫の扶養に入ることができます。
そもそも「扶養」とはどんなことでしょうか?
「扶養」とは、簡単にいうと「生活の面倒」をみること。
日本では、国民皆保険制度があるので、誰でも生まれたら何らかの健康保険に入り、20歳以上になったら国民年金に加入しなければなりません。
さらに、厚生年金保険に加入している会社に勤務して一定時間以上働いたら、厚生年金保険に加入することとなります。
国民年金や厚生年金保険といった公的年金の他にも、所得税や住民税などの「納税の義務」が憲法によって定められていますね。
もし無職だったり、極端に収入が低かったりする場合、これらの公的年金や税金を支払うことができません。
このように収入が無い(少ない)人は、誰かに面倒をみてもらって生計をたてたり、税金や保険料を免除してもらったりする必要が出てきます。
これが、「扶養に入る」ということなのです。
結婚後、寿退社して扶養に入るメリット
結婚後に退職して、扶養に入ると、税制上ちょっとしたメリットがあります。
入るべきかどうか、自分たち夫婦の家計を見直してみましょう。
1:妻は社会保険料を払う必要はない
退職前、妻は自分の社会保険料(年金や健康保険料)を払っていましたが、夫の扶養に入ると、支払う必要がなくなります。
2:夫が控除を受けると税金が低くなり、手取りが増える
妻が夫の扶養に入ることで、夫は配偶者控除(配偶者特別控除)を受けることができます。
配偶者控除を受けると、夫の収入のうち納税の対象となる金額が減ります。
そのため、納税額が低くなり、手取りが増えることになります。
結婚後、寿退社して扶養に入るデメリット
扶養に入ると多くのメリットがありますが、デメリットもよく考えて。
1:妻の働き方や収入が制限されるかも
配偶者の扶養に入るということは、常に条件の範囲内(※)で働くことを意識しなくてはなりません。
正社員としてフルタイムで働いていた時より、妻自身の収入が減る、または少なくなったり、職種や仕事の内容が制限されることも。
※年間収入が130万円未満でなければならない、など。扶養に入る条件は記事の後半で解説します。
2:妻の将来の年金額が減るかも
夫の扶養に入ると、夫の加入する健康保険組合などが、妻の年金を負担してくれます。
ただ、妻が働いていたら入るはずの厚生年金には加入しないので、将来受け取る年金額が減ってしまうことに。
【共働き・パート・妊娠】扶養に入るべき?入らない方がいい?
退職後、扶養に入ったほうがいいかどうか、自分がどのパターンになるか確認してみて。
いったん退職はするけれど、働く意志があるから再就職してバリバリ働きたい
→扶養に入らず、失業手当をもらいながら求職活動をする
働く意志はあるけど、税金や保険料を自分で払ってまでは働きたくない
→専業主婦となり、夫の扶養に入って、パートなどで収入をセーブしながら働く
妊娠・出産を控えており、出産後は育児に専念したい
→夫の扶養に入る
妊娠・出産を控えてはいるが、出産後は働く意志がある
→失業保険の受給期間延長手続きをして、働けるタイミングになったら求職活動を。
失業保険の受給期間延長中は、夫の扶養に入ることもできる(※)
※妻が失業保険の手続きをしても、失業手当を受け取っていない期間中は、扶養に入ることができます。
ただし、短期間で妻が扶養に入ったり外れたりが実際できるかは、夫の健康保険組合によって違いがあるので、問い合わせが必要。
妻が夫の扶養に入る条件。年収はいくらまでなら入れる?【社会保険上】
結婚すれば誰でも、夫の扶養に入れるわけではありません。
扶養には次の2種類あり、それぞれ入るための条件があります。
- 社会保険上の扶養
- 税法上の扶養
社会保険上の扶養に入る条件
社会保険上の扶養とは、健康保険や年金に関わることです。
- 配偶者であること(同居・別居を問わない)
- 年間収入が130万円未満(過去の収入ではなく、むこう1年間の収入見込み)
- 同居の場合…収入が夫の収入の半分未満
- 別居の場合…収入が夫からの仕送り額未満
- 給与所得などの収入があるなら、月額108,333円以下
- 失業保険を受給しているなら、日額3,611円以下
社会保険上の扶養に入るとどうなる?
- 妻は健康保険料を支払わなくて済む
- 妻の年金は、夫の加入する厚生年金や共済組合が負担
- 夫は1人分の健康保険料・年金を負担するのみでOK
- 夫の加入する健康保険組合から妻に対して被保険者証が発行される。医療費の支払いには保険が適用される
ただし妻の収入が、130万円以上(妻の勤務状況によっては106万円超)になると、社会保険上の扶養から外れ、妻が自分で社会保険料を払うことになります。
夫が自営業で、国民年金や国民健康保険に加入中の場合は、妻の収入が130万未満であっても、妻の分の年金や保険料の支払いが生じます。
妻が夫の扶養に入る条件。年収はいくらまでなら入れる?【税法上】
つぎに、税法上の扶養に入る条件を解説します。
税法上の扶養とは、住民税や所得税に関わることです。
税法上の扶養に入る条件
- 配偶者であること
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 自営業者の家族従業員になっていないこと
税法上の扶養に入るとどうなる?
- 妻は住民税や所得税を払う必要がない
- 妻の給与収入が103万円以下なら、夫は配偶者控除を受けられる(※)
- 妻の給与収入が103万円~201万円までなら、配偶者特別控除を受けられる(※)
※いずれも夫の年収が1,000万円以下の場合
もし妻の収入が100万円を超えると、扶養から外れて住民税、103万円を超えると所得税をそれぞれ支払う義務が出てきます。
注意!結婚後退職して無職になっても、扶養に入れない場合
退職して、無職になったとしても、以下のケースに当てはまるなら、夫の扶養には入れません。
その年の収入がすでに103万円を超えている(税法上の扶養)
税法上の扶養に入るための条件は、年間の収入が103万円未満。
年度の途中で退職して、今は無職で収入がなくても、退職した時点で収入が年間103万円以上あった場合、その年は税法上の夫の扶養には入れません。
つまり、夫が配偶者(特別)控除を受けることができません。
ただし年末に退職すれば、その年の収入が103万円を超えていたとしても、翌年から夫の税法上の扶養に入ることができます。
なお社会保険上の扶養は、現時点までの収入ではなく、今後の収入が130万円未満が条件。
つまり寿退社して無職になるなら、それまでの収入に関係なく、すぐに扶養に入ることができます。
失業保険の受給期間(社会保険上の扶養)
失業手当の日額が3,611円以下なら扶養に入れますが、3,612円以上受給していると、夫の扶養に入ることができません。
社会保険上の扶養の条件は、年間収入見込みが130万円以下。
130万円を1年間(360日)で割ると、約3,611円。
3,612円以上失業手当を受給すると、年間で計算し直した場合、130万円を超えてしまうからです。
結婚退職後、夫の扶養に入るタイミングはいつがいい?
退職して、扶養に入れる条件を満たしているなら、退職した翌日から5日以内に扶養に入れるといいでしょう。
妻は退職すると同時に、勤め先の健康保険や厚生年金から脱会することになります。
退職してから扶養に入るまでに期間があくと、妻が自分で国民年金や国民健康保険の保険料を払わなければなりません。
扶養に入るタイミングは、退職後すぐがベスト。
扶養手続きに必要な提出物
退職後夫の扶養に入る場合は、夫の勤め先に書類を提出すれば、必要な手続きをしてもらえます。
妻が退職した翌日から5日以内に以下の書類を提出して。
- 夫の会社からもらう書類(健康保険被扶養者届(異動届)、国民年金第3号被保険者関係届など)
- 印鑑(新姓)
- マイナンバーもしくは年金手帳(基礎年金番号)
- 源泉徴収票(確定申告時のみ)
夫の勤務先によって、提出物が異なる場合があるので、できれば妻の退職前に必要なものを確認しておきましょう。
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扶養に入った後、自分でやるべき公的手続き
夫の扶養に入っても、すべての公的手続きを夫の会社がしてくれるわけではありません。
妻や夫自らが手続きをしなければならないこともあります。
住民税の支払い
住民税は前年度の所得に応じて、翌年に納める仕組みになっています。
具体的には、1月~12月までの収入に対して決定した住民税の金額を、翌年の6月から翌々年5月までに支払います。
退職して専業主婦になり、夫の扶養に入ったとしても、前年度分の住民税は妻自身が支払わなくてなりません。
働いていた時、住民税は給与から天引きされていましたが、退職後はコンビニや金融機関、自治体の窓口などから支払いをします。
退職後は市区町村の役所から納付書が送られてくるので、それに従いましょう。
確定申告して、払いすぎた税金を取り戻す
通常企業では、1年分の収入を見込んで所得税を計算し、毎月の給与から天引きしています。
実際に払うべき所得税と違いが出た場合は、企業が年末調整をして、払い過ぎた税金を納税者に返す仕組みになっています。
でも年の途中で会社を辞めてしまうと年末調整されないので、払い過ぎていた税金がある場合、そのままになってしまいます。
もし自分で確定申告をすれば、払い過ぎた税金はもどってくることが多いので、必ず申告しましょう。
◆確定申告が必要な人
- 結婚後退職して、夫の扶養に入った人
- 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった人
◆確定申告に必要なもの
- 勤めていた会社でもらった源泉徴収票
- 確定申告書(税務署でもらえる、国税局のHPからダウンロードも可)
夫が配偶者(特別)控除の申請をする
年末近くなると、年末調整のための書類(「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」)が会社で配布されます。
このタイミングで妻が退職していれば、夫が必要な書類を提出して、配偶者(特別)控除を受けることができます。(夫の年収が1,000万円以内の場合)
ところが書類の提出期限後に妻が退職したら、手続きが間に合わなくなってしまいます。
この場合は、年明け~1月31日までなら、会社でやり直してくれます。
それが無理なら、夫が自分で確定申告すれば、払いすぎていた税金が戻ってきます。
まとめ
- 「扶養」とはだれかに養ってもらうこと
- 扶養には社会保険上の扶養と税法上の扶養があり、それぞれ条件がある
- 退職後、夫の扶養に入るなら、夫の会社で手続きをする
- 扶養に入るのは「退職してすぐ」がベスト
夫の扶養に入ることで、妻の保険料や年金は優遇され、夫の税金も少なくなりますが、妻の収入がなくなる、もしくは少なくなることに。
結婚後のライフスタイルをよく考えて扶養に入かどうかを、退職前から考えておきましょう。